先端設備等導入計画とは、生産性向上特別措置法に基づくもので、中小企業・小規模事業者等が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。
計画の認定を受けるためには、国から「導入促進基本計画」の同意を受けている市町村に対して、先端設備等導入計画等の必要書類を提出する必要があります。
認定を受けた場合、固定資産税の軽減や、国による金融支援などを受けることができます。
人手不足や設備の老朽化、資金繰りに悩む事業主の方にはとても助かる制度ですね。
この他、補助金を申請する際にもプラスになります。
今回は、先端設備等導入計画の概要や、要件、メリット、申請手順についてご紹介します。
まずは、概要について見ていきましょう。
目次
1.先端設備等導入計画とは?
先端設備等導入計画とは、中小企業者が、一定期間内に労働生産性を向上させるため、先端設備等を導入する計画を策定し、その内容が、新しく導入する設備が所在する市区町村の「導入促進基本計画」に合致する場合に認定を受けられる、というものです。
具体的な期間や労働生産性向上率などの要件は、次の通りです。
○計画期間
3年間~5年間
○労働生産性の向上率
計画期間において、労働生産性が年平均3%以上向上すること。
<算定式>
○対象となる先端設備等
対象となるのは、労働生産性を向上させるために必要な生産・販売活動等に使用する次の設備です。
機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェア
※対象となる設備等については、市区町村で作成する導入促進基本計画で異なる場合があります。
○先端設備等導入計画として記載する内容
- ①先端設備等導入の内容
・事業の内容及び実施時期
・労働生産性の向上に係る目標 - ②先端設備等の種類及び導入時期
・直接当該事業の用に供する設備として取得する設備の概要
例)機械の種類、名称・型式、設置場所等 - ③先端設備等導入に必要な資金の額及びその調達方法
※計画については、認定経営革新等支援機関に事前確認してもらう必要があります。
以上が、先端設備等導入計画の概要と要件です。
次に、この計画の対象となる事業者について見ていきましょう。
2.先端設備等導入計画の対象となる事業者は?
先端設備等導入計画の対象となる中小事業者は、次のとおりです。
※自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業、並びに工業用ベルト製造業を除く
個人事業主や、有限会社、士業法人、企業組合等も認定を受けることができます。
ただし、市区町村が定める導入促進基本計画によって対象となる業種等が異なる場合がありますので、認定を受けようとする自治体に確認しましょう。
また、税制支援を受けようとする場合、対象となる規模要件が異なります(後述)ので注意が必要です。
3.先端設備等導入計画の認定を受けるメリットとは?
先端設備等導入計画が認定されると、新しく導入する設備の固定資産税の軽減や、計画に基づく事業に必要な資金繰りの支援を受けられます。
この他にも、一部の補助金を申請する際に、補助率のアップや審査時の加点といったメリットがあります。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
3-1.先端設備等導入計画の税制支援措置とは?
先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業者の中で、一定の要件を満たす事業者は、地方税法において固定資産税の特例を受けることができます。
これは、適用期間内に市区町村から認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づいて一定の設備を新規取得した場合、新規取得設備に係る固定資産税の課税標準が3年間にわたってゼロ~1/2の割合に軽減される、というものです。(割合は市区町村が決定します)
適用期間とは、「生産性向上特別措置法」の施行日から平成33年3月31日までの期間です。
税制支援措置の対象事業者は?
税制支援の対象となる事業者は、次の要件を満たす事業者です。
- 資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
- 資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
ただし、次の法人は、たとえ資本金が1億円以下でも中小企業者とはなりませんので注意しましょう。
- ①同一の大規模法人(資本金もしくは出資金の額が1億円超の法人又は資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人、資本金又は出資金の額が5億円以上である法人 との間に当該法人による完全支配関係がある法人等)から2分の1以上の出資を受ける法人
- ②2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
税制支援措置の対象となる先端設備等とは?
税制支援措置を受けられる先端設備等には、次の2つの要件があります。
<先端設備等の要件>
- ①一定期間内に販売されたモデルであること(最新モデルでなくても可。中古資産は対象外。)
- ②生産性の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が 旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備。
※要件①、②について、工業会等から証明書を取得する必要があります。
<対象設備>
- ○機械装置(最低取得価格160万円以上で販売開始10年以内)
- ○測定工具および検査工具(最低取得価格30万円以上で販売開始5年以内)
- ○器具備品(最低取得価格30万円以上で販売開始6年以内)
- ○建物付属設備(最低取得価格60万円以上で販売開始14年以内)
※償却資産として課税されるものに限ります。
上記設備は、市町村の作成する「導入促進基本計画」 によっては、対象が異なる場合ありますので、事前に確認しましょう。
<設備の取得時期は?>
先端設備等については、「先端設備等導入計画」の認定後に取得することが必須です。
時期を遡っての申請はできませんので注意しましょう。
計画の申請・認定までに工業会証明書が間に合わない場合は、特例として、賦課期日(1月1日)までに工業会等証明書と所定の誓約書を追加提出することで特例を受けることができます。
先端設備等導入計画の申請を考え始めると同時に、工業会証明書の作成を依頼して準備を進めたいですね。
次に、認定を受けた場合の金融支援について見ていきましょう。
3-2.先端設備等導入計画で受けられる金融支援とは?
先端設備等導入計画が認定された事業者は、資金調達の際に債務保証に関する支援を受けることができます。
中小企業信用保険法の特例により、先端設備等導入計画の実行にあたって、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証を受けることができます。
ただし、金融支援を受けるためには、先端設備等導入計画の申請前に関係機関に相談する必要があります。
また、計画の申請時に、認定経営革新等支援機関の確認書等が必要です。
金融機関及び信用保証協会の融資・保証の審査は、市区町村の先端設備等導入計画の認定審査とは別に行なわれます。
認定を取得しても融資・保証を受けられない場合がありますので、注意しましょう。
3-3.補助金申請時のメリット
先端設備等導入計画に認定された事業者は、一定の条件を満たす場合に、一部の補助金の申請において、加点や補助率アップが適応されます。
2019年4月時点では、ものづくり補助金とIT導入補助金において補助率アップ、審査時の加点対象になるようです。
ものづくり補助金
ものづくり補助金では、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(一般型・小規模型)」において、審査時の加点、補助率1/2→2/3が適用されます。
また、「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業(連携型)」でも、審査時の加点、補助率1/2→2/3が適用されます。
IT導入補助金
IT導入補助金では、先端設備等導入計画の認定を受けている場合、審査時に加点されます。
先端設備等導入計画に認定されると、固定資産税の軽減、金融支援、補助金申請時の加点等のメリットを受けることができます。
こういった支援やメリットをスムーズに受けるためには、計画的に申請する必要があります。
では、最後に具体的な申請手順について見ていきましょう。
4.先端設備等導入計画の申請手順は?
ここでは、先端設備等導入計画を申請する際の手順についてご紹介します。
①事前準備
まず、新たに導入する設備が所在する市区町村が「導入促進基本計画」を策定しているか確認しましょう。
導入促進基本計画を策定している市区町村については、中小企業庁HP等で公表されます。
市区町村によっては、認定の対象となっていない業種や地域等もありますので、詳細については市区町村に確認しましょう。
認定を受けられるのは、新規取得する設備が所在する市区町村になります。
上の、「税制支援措置の対象となる先端設備等とは?」の項でも書きましたが、該当する新規取得設備の取得日よりも前に、先端設備等導入計画の作成・認定が必要です。
既に取得した設備を対象とする計画は認定されません。
②先端設備等導入計画の策定
計画の策定に取り掛かります。その際、市区町村が策定した「導入促進基本計画」の内容に沿っているかを確認しながら作成しましょう。
計画が出来上がったら、先端設備等導入計画の様式・記載例を確認し、認定支援機関に確認を依頼します。
税制措置を受けるためには、新たに取得しようとしている設備に係る工業会証明書を依頼します。
③先端設備等導入計画の申請・認定
新たに設備を導入しようとしている市区町村に、必要書類を提出します。
認定された場合、市区町村長から認定書が交付されます。
④先端設備等導入計画の開始
新規設備の導入や金融支援を受け、認定された計画を実行します。
以上、簡単ではありますが、先端設備等導入計画の申請手順です。
5.まとめ
今回は、先端設備等導入計画の概要や要件、メリット、申請手順についてご紹介しました。
認定の対象となる業種や設備等については、市区町村によって違いがありますので、申請する際には、新しく導入する設備が所在する市区町村のホームページや窓口でしっかり確認することが大切ですね。
また、申請には、認定経営革新等支援機関による事前確認が必要です。
証明書や確認書類の作成には時間がかかる場合がありますので、余裕を持って準備しましょう。
今回の記事が参考になれば幸いです。