女性の活躍を応援する「女性活躍加速化」コースとは?

ワークライフバランスの向上を目指す、両立支援等助成金。
育児と仕事、介護と仕事など、仕事と家庭生活を両立できる職場環境づくりを目的とした取り組みを行う事業主を支援する制度です。

その中でも、「女性活躍加速化コース」では、女性のさらなる活躍に向けた取り組みを実施する中小企業に対して助成金が支給されます。

今回は、両立支援等助成金の中の女性活躍加速化コースについて、その概要や助成金額などをご紹介します。

1.女性活躍推進法とは?


女性活躍加速化コースについて詳しく見ていく前に、そのベースにある「女性活躍推進法」について少し確認しておきましょう。

女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、2015年8月に国会で成立しました。2016年4月施行の10年間の時限立法です。

女性の職業生活を充実させ、働きやすい環境づくりを企業に求める法律で、そのための数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表などが事業主に義務付けられました。

2021年2月現在、常時雇用する従業員数301人以上の企業が対象となっています。

※常時雇用する従業員には、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなど、名称に関わらず、次の要件に該当する従業員も含みます。

  1. 期間の定めなく雇用されている者
  2. 一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、または雇い入れの時から、1年以上引き続き雇用されると見込まれている者

300人以下の企業については、努力義務とされていますが、2019年5月の法改正により、2022年4月以降は101人以上に拡大されます

行動計画の策定・届出を行った企業のうち、取り組みの実施状況が優良な企業に対しては、「えるぼし認定」を取得することができます。2020年6月からは、現行のえるぼし認定よりも水準の高い「プラチナえるぼし認定」が創設されました。

この「えるぼし認定」を受けることで、女性の活躍を推進している企業としてのPRに使用することができ、優秀な人材の確保や企業イメージの向上が期待できます。

こういった女性活躍推進法の、中小企業での取り組みを支援する施策が、両立支援等助成金の「女性活躍加速化コース」です。

2.両立支援等助成金・女性活躍加速化コース


女性活躍加速化コースでは、上記の女性活躍推進法に沿って、当該コースの定める数値目標及び取組目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表した上で、取組目標を実施したことにより、数値目標を達成した中小企業に助成金が支給されます。行動計画の期間は2~5年間です。

対象となる中小企業は、常時雇用する従業員が300人以下の事業主です。

2019年度までは、目標達成の度合いに応じた加速化Aコースと加速化Nコースに分けられていましたが、2020年度の申請より2つのコースが統合されました。

2-1.女性活躍加速化コース:目標区分

女性活躍加速化コースでは、自社の女性活躍推進に関する課題を解決するための目標区分として、次の4つが設定されています。

  1. 女性の積極採用に関する目標
  2. 女性の配置・育成・教育訓練に関する目標
  3. 女性の積極登用・評価・昇進に関する目標
  4. 多様なキャリアコースに関する目標

それぞれの区分の中には、助成の対象となる数値目標と取組目標があります。
詳しく見ていきましょう。
なお、「数値目標」とは、雇用管理区分ごとにみた職務、役職において、男性と比較して女性の割合が一定以上少ないなどの課題を解決するために具体的な数値を設定するものです。
取組目標」は、数値目標を達成するために行う取組のことです。

2-1-1.女性の積極採用に関する目標

女性がいない、または少ない職種について、積極的に女性を採用するために行う取組や数値目標です。

<数値目標>

  • 採用における女性の競争倍率を〇%まで引き下げる
  • 女性の採用者数を〇人増やす、採用者に占める女性の割合を△%増加させる など

<取組目標>

  • 女子学生向けセミナーの実施
  • 女性が使いやすい設備や機器等の導入 など

2-1-2.女性の配置・育成・教育訓練に関する目標

女性がいない、または少ない職種で女性の割合を増やすために行う取組や数値目標です。

<数値目標>

  • 女性のいないまたは少ない職種で女性を△人以上増加させる
  • 管理職に占める女性の割合を〇%増加させる など

<取組目標>

  • 女性のいないまたは少ない職種への配置転換・コース転換を可能とし、そのための研修・セミナー等の実施
  • 新たに女性を配置しようとする現場の環境整備(更衣室やトイレ、シャワー室、休憩室・仮 眠室等の改修等) など

2-1-3.女性の積極登用・評価・昇進に関する目標

管理職や課長職、次長級の女性の割合を増やすために行う取組や数値目標です。

<数値目標>

  • 管理職に占める女性の割合を〇%増加させる
  • 課長級/次長級/部長級の女性管理職を現状の□人から△人に増加させる など

<取組目標>

  • 管理職を目指す女性社員を対象としたセミナーの実施
  • 女性社員が受講する通信教育やEラーニング費用の負担 など

2-1-4.多様なキャリアコースに関する目標

一般職から総合職への転換など、女性のキャリアアップなどを目的とした取組や数値目標です。

<数値目標>

  • 一般職の女性従業員のうち、総合職への転換者を、〇年度の△人から□人以上増加させる など

<取組目標>

  • 一般職から総合職へのコース転換制度や試験制度を構築、実施する など

以上が、女性活躍加速化コースに必要なの数値目標と取組目標です。

女性活躍加速化コースは、女性活躍促進法に基づいた取り組みを行う事業主を支援する制度です。「3.女性活躍加速化コースの申請の流れ」でもご紹介しますが、まず自社での状況を把握し、課題を分析した後、上に挙げた区分の中から、自社の課題を解決するためにふさわしい数値目標、取組目標を選び、その内容を盛り込んだ行動計画を策定する必要があります。
行動計画の策定には、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページにて、作成方法が紹介されています。「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう(パンフレット)」

2-2.女性活躍加速化コース:助成金額

女性活躍加速化コースでは、定められた期間内に数値目標を達成し、達成状況を公表した企業に対して助成金が支給されます。1企業1回と定められています。

助成額:47.5万円<60万円>

<>内の数字は、「生産性要件」を満たした場合に受け取ることが出来る金額です。

生産性要件とは、生産性を向上させる取り組みを支援するため、生産性を向上させた企業に対する助成金額、または助成率を割増する制度です。
次のいずれかの要件を満たすと、生産性要件が適用されます。

  1. 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年前に比べて6%以上伸びていること
  2. 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること

参考:厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」

上記の条件をクリアすることで、女性活躍加速化コースでは60万円の助成金が支給されることになります。

次は、女性活躍加速化コースの申請方法についてみていきましょう。

3.女性活躍加速化コースの申請の流れ

女性活躍加速化コースの申請は、主に次のような手順で行います。行動計画の届出や支給申請についてはそれぞれ期限が定められていますので、事前にしっかり確認しておきましょう。

  1. 自社の女性従業員の活躍状況の把握と課題の分析
  2. 課題解決にふさわしい数値目標と、その達成に向けた取組内容、取組の実施期間、計画期間を盛り込んだ行動計画の策定・公表 社内に通知、外部公表
  3. 自社の女性従業員の活躍の状況を公表
  4. 都道府県労働局へ行動計画の届出
  5. 行動計画期間内に取組目標の実施、3年以内に数値目標を達成&公表
  6. 支給申請を行う
  7. 助成金の支給

以上が、女性活躍加速化コース申請の流れです。
4の行動計画の届出は、遅くとも支給申請までに行う必要があります。行動計画を策定したら、なるべく早めに届出ておくようにしましょう。
また、行動計画の外部公表や、女性従業員の活躍状況の公表には、女性活躍推進企業データベースの活用が勧められています。
支給申請には、「行動計画に記載した期間内に取組目標を実施し、3年以内に数値目標を達成・公表する」ことが条件です。

3-1.女性活躍加速化コースの支給申請先と申請期限

女性活躍加速化コースの支給申請先と申請期限は、以下の通りです。

支給申請先:各都道府県の労働局 
支給申請期限:数値目標を達成した日の翌日から起算して2か月以内

なお、支給申請期限までに労働局に必要書類が提出されている必要がありますので、注意しましょう。

3-2.女性活躍加速化コースの支給申請に必要な書類は?

女性活躍加速化コースの支給申請では、「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)支給申請書<【加】様式第1号>」及び「支給要件確認申立書<共通要領様式第1号>」に加えて、以下の11種類の書類の写しを添付する必要があります。

①行動計画の写し(次期の行動計画を策定したため、女性の活躍推進企業データベースに掲載されている行動計画と申請に係る行動計画が異なる場合のみ提出)

②行動計画策定時の雇用管理区分ごとに見た職務又は役職における男女の労働者数がわかる書類

③申請事由となった数値目標及び取組目標に関する、自社の女性労働者の活躍に課題があることがわかる書類

④行動計画を、労働者へ周知していることがわかる書類

⑤雇用契約書、労働条件通知書に加えて、短時間正社員が目標達成に係る対象者の場合には、短時間正社員の制度について規定した就業規則など

⑥取組目標を達成したこと及びその期日を明らかにする書類(例えば、女性の積極採用を目的としたセミナーを実施した場合には、その実施日、内容などが確認できる案内状やセミナー次第など)

⑦数値目標を達成したこととその期日が確認できる書類(取組前と取組後及び支給申請日におけるそれぞれの数値がわかるもの。例えば、女性の積極採用に関する数値目標では、取組前と後の男女別応募者数と採用者数の分かる書類の写しなど)

⑧管理職に占める女性労働者の割合の引上げを数値目標とする場合は、対象労働者に係る賃金台帳(管理職登用前6か月分(登用日の前日から6か月前の日までの賃金に係る分)及び管理職登用後6か月分(登用日から6か月経過する日までの賃金に係る分))

⑨数値目標が「管理職に占める女性労働者の割合の引上げ」に関するものである場合は 「【加】別様式の1」を、「女性が少ない職種等における女性の人数または比率の引上げ」に関するものである場合は「【加】別様式の2」をあわせて提出する。

⑩生産性要件を満たした場合の額の適用を受けようとする場合は、生産性要件算定シート(様式 第2号)」と算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘 定元帳など)

⑪その他管轄労働局長が必要と認める書類

             (参考:両立支援等助成金 「女性活躍加速化コース支給要領」

以上が、女性活躍加速化コース支給申請時の必要書類です。
添付する種類が多いため、支給申請までにしっかりと確認し準備しておきたいですね。

まとめ

今回は、両立支援等助成金の中でも、女性の活躍を応援する事業主のための「女性活躍加速化コース」についてご紹介しました。

現在のところ、従業員300人以下の企業にとっては努力義務となっている女性活躍推進法ですが、2022年6月からは、101人以上300人以下の企業に範囲が拡大されます。
300人以下の企業にとっては、女性活躍加速化コースに取り組むことによって、助成金を獲得すると同時に、女性活躍推進法にも対応することができるので、一挙両得と言えますね。

また、中小企業の場合、行動計画の策定・届出を行うだけで、各府省等が実施する公共調達で加点評価を得られるなど、今後の企業経営にとってもメリットがあります。
(通常はえるぼし認定の獲得が必要)

取組に必要な行動計画については、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページで紹介されている他、女性の活躍推進企業データベースでは、先行する他社の取り組みを閲覧することが出来ます。自社の行動計画を策定する際に役立ってくれますね。

自社でのさらなる女性の活躍を進めたいと考えている場合には、是非とも利用したい制度です。