キャリアアップ助成金とは? 要件や申請手順は?

企業では、正社員をはじめ、契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなどさまざまな雇用形態の人々が働いています。

こうした中で、契約社員などの、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための制度が、厚生労働省管轄の「キャリアアップ助成金」です。

今回は、キャリアアップ助成金制度の概要や、要件、申請手順等についてご紹介します。まずは、どういった制度なのかについてみていきましょう。

1.キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金とは、有期契約社員やパート、アルバイト、派遣社員など、いわゆる非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するために、正社員化やスキルアップ、昇給等の処遇改善に取り組んだ企業に対して支給されるお金のことです。

従業員にとっては、その企業内でステップアップする機会を得られる制度です。と同時に、企業にとっては、人材の育成や確保など、企業の成長につながる取り組みを通して助成金をもらえるもので、双方にとってメリットのある制度です。

具体的な内容をみていきましょう。

1-1.キャリアアップ助成金の7コース

キャリアアップ助成金には、平成31年4月現在、目的ごとに次の7コースが用意されています。

  • 正社員化コース

派遣社員やアルバイトなどの有期雇用の従業員を、正規雇用もしくは、多様な正社員に転換した場合に助成されます。

  • 賃金規定等改定コース

有期契約従業員等のすべて、または一部について基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給した場合に助成されます。

  • 健康診断制度コース

有期雇用の従業員等に対して、法定外の健康診断制度を新設、導入し、延べ4人以上実施した場合に助成されます。

  • 賃金規定等共通化コース

有期雇用の従業員等に関して、正規雇用の従業員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されます。

  • 諸手当制度共通化コース

有期雇用の従業員等に関して、正規雇用の従業員と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した場合に助成されます。

  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース

労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置により、有期雇用の従業員等を新たに被保険者とし、基本給を増額した場合に助成されます。

(※このコースは令和2年3月31日までの暫定措置です。)

  • 短時間労働者労働時間延長コース

短時間勤務の従業員の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成されます。

以上が、キャリアアップ助成金の7コースの概要です。

コースの数や内容は変更される場合がありますので、応募しようとする年の最新の案内を参考にするようにしましょう。

次に、支給要件についてみていきます。

2.キャリアアップ助成金の支給要件とは?

キャリアアップ助成金は、他の助成金と同様に支給要件が定められています。

対象となる事業主や、中小企業の範囲についてみていきましょう。

2-1.対象となる事業主

キャリアアップ助成金では、各コースで助成金の支給対象となる事業主の要件は異なります。この記事では、全コース共通の要件についてみていきましょう。

キャリアアップ制度の対象となる事業主>(全コース共通)

厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」p.4(平成31年4月)には、次の要件が挙げられています。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働 局長の受給資格の認定を受けた※事業主であること
    ( ※ キャリアアップ計画書は、コース実施日までに管轄労働局長に提出する必要があります。また、キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。)
  • 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備している事業主であること
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

以上が、キャリアアップ制度の対象となる事業主です。

事業主には大企業、中小企業、医療法人、公益法人などが含まれますが、中でも中小企業については、大企業やその他の事業主と比べて、助成金の金額が高く設定されています

キャリアアップ助成金制度での、中小企業の範囲について確認してみましょう。

2-2.中小企業の範囲

キヤリアアップ助成金の定める中小企業の範囲は、以下の表のとおりです。
また、資本金等がない事業主については、常時雇用する労働者の数で判断されます。

キャリアアップ助成金(中小企業の範囲)(出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内 p. 3)

 

以上のような中小企業に当てはまる場合、もらえる助成金の金額が大企業よりも多くなります

例えば、正社員化コースで、有期雇用者を正規雇用に転換した場合、1人当たり57万円(生産性の向上が認められる場合は72万円)の助成金を受け取ることになります。大企業の場合は、42万7,500円(54万円)ですので、10万円以上多く助成を受けられることになります

以上が、キャリアアップ助成金の対象となる事業主の要件です。

これに加えて、キャリアアップ助成金には、助成金額を割り増しして受け取ることのできる、「生産性向上の要件」というものがあります。

2-3.生産性向上の要件

キャリアアップ助成金では、生産性向上の要件を満たす企業については、通常の助成額を割増した金額の助成金を受け取ることができます

提出する書類は増えますが、助成金の増額はありがたいことですね。

適用されるのは、申請する企業が以下の方法で計算した「生産性要件」を満たしている場合です。

キャリアアップ助成金(生産性要件(出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内 p.9)

 

以上が、生産性向上の要件です。この要件を満たす事業主の場合は、キャリアアップ助成金の支給額が増額されます。

例えば、先ほど挙げた中小企業で正社員化コースの場合、1人当たり57万円の助成金が、72万円に増額されます。15万円もアップするのはありがたいですね。

最後に、キャリアアップ助成金を利用する際の手順についてみていきます。

3.キャリアアップ助成金の申請手順

ここでは、実際にキャリアアップ助成金を利用する場合の手順や要件についてみていきます。

キャリアアップ助成金を利用する場合には、まず初めに、「キャリアアップ計画」という、誰を対象にどのようなキャリアアップを実施するのか、といった計画書を労働局に提出する必要があります。

3-1.キャリアアップ計画の作成・提出・認定

キャリアアップ助成金制度を利用しようとする場合、まず、「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」に沿って、キャリアアップ計画を作成することになります。

キャリアアップ計画とは、有期雇用の従業員のキャリアアップを計画的に進めるために、“対象者”や“計画の実施期間”、“目標”、“目標を達成するために事業主が行うこと”、といった大まかな取り組みをあらかじめ記載するものです。

途中で変更する場合には、「キャリアアップ計画変更届」を提出する必要があります。

※変更した場合に変更届が出されていないと、助成金が受け取れないことがありますので注意しましょう。

キャリアアップ計画の作成については、「計画の期間は3年以上5年以内に設定する」、「キャリアアップ管理者を決める」、「計画の対象者となる有期契約・無期雇用の従業員の意見が反映されるよう、有期契約従業員等を含む事業所のすべての従業員の代表者から意見を聴く」といった点に留意して作成するように厚労省の案内には示されています。

キャリアアップ管理者とは、有期雇用の従業員等のキャリアアップに取り組む者として、必要な知識と経験を有していると認められる人のことです。

事業所が有期雇用の従業員のみで、店長等その事業所の責任者も有期雇用の従業員の場合でも、上のようなキャリアアップ管理者として適格と認められる人物であれば、キャリアアップ管理者になれます。

キャリアアップ計画の作成については、所轄の労働局、ハローワークの意見等も聴いて作成し、コース実施日までに管轄労働局長に提出・受給資格の認定を受ける必要があります。

3-2.キャリアアップ計画の実施

キャリアアップ計画書を提出し、認定された後、計画に沿った取り組みを実施します。

その過程で、就業規則等の改定を行う場合には、労働局、ハローワークに相談して進めましょう。

3-3.キャリアアップ助成金の支給申請

キャリアアップ計画にのっとった取り組みを実施した後、助成金の支給申請を行います。

各コースで定められた支給申請期間内に、支給申請書と必要書類を、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。

添付する書類には、対象者の名簿や雇用契約書、出勤簿や賃金台帳等が含まれます。これもコースによって異なりますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

支給申請書と添付書類を提出すると、労働局で審査が行われ、許可されると助成金が支給されます。

以上が、キャリアアップ助成金を申請する際の大まかな流れと要件です。

まとめ

今回は、キャリアアップ助成金について、制度の概要や申請手順、要件についてご紹介しました。

非正規雇用の従業員とっては、自身のキャリアアップや待遇改善に繋がり、事業主にとっては、事業を支える従業員の確保・育成をすることが助成金の支給に繋がるという、ありがたい制度です。

7コースに分かれており、それぞれのコースで多少要件が異なります。

実際の利用に関しては、キャリアアップ計画の作成・提出する必要があったり、支給申請には必要書類を準備する必要があったりと、少し手間がかかりそうです。

申請する際は、最新の案内をしっかり読んで、不明な点は労働局やハローワークに確認しながら進めるようにしましょう。

今回の記事が参考になれば幸いです。