小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む持続的な経営に向けた経営計画に基づいた地道な販路開拓(売り方の工夫や商品改良等)や生産性向上の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助してくれる制度のこと。
その名前の通り、全国の小規模事業者を対象としています。
販促用のパンフレットの作成、折込チラシなどの販促宣伝活動や、店舗改装等にかかる費用の一部を補助してくれます。
この記事では、小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者や補助金の金額など、制度の概要と基本的な申請手順についてご紹介したいと思います。
まずは、小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者について見ていきましょう。
目次
1.小規模事業者持続化補助金の対象事業者は?
小規模事業者持続化補助金の対象となるのは、日本国内に所在する小規模事業者です。
公募要領では、次のように定義されています。
卸売業・小売業 |
従業員数5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業以外) |
従業員数5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
従業員数20人以下 |
製造業その他 |
重量因数20人以下 |
なお、補助の対象となるのは会社、および会社に準ずる営利法人(株式会社、合同会社等)と個人事業主で、医師、歯科医師、助産師、一般社団法人、NPO法人など営利企業に該当しない法人は対象となりませんのでご注意ください。
次に、気になる補助金の金額について見てみましょう。
2.小規模事業者持続化補助金でもらえる補助金はいくら?
小規模事業者持続化補助金で支給される補助金は、基本的には、補助率3分の2、上限50万円です。
つまり、75万円以上の補助対象となる経費について、50万円の補助を受けることができます。
75万円未満の場合は、その3分の2の金額を補助してくれます。
例えば、60万円の経費に対しては、その3分の2の40万円が補助されます。
平成29年度補正予算の公募では、次の3つの取り組みを行う事業者に対しては、補助金の上限金額が100万円に引き上げられます。
- ①従業員の賃金を引き上げる取組み
- ②買物弱者対策に取り組む事業
- ③海外展開に取り組む事業
上記の事業に取り組む場合は、補助上限額が100万円となります。
この場合は、150万円以上の経費に対して、100万円の補助を受けることができます。
また、複数の小規模事業者が連携して取り組む共同事業の場合には、補助上限額が「1事業者あたりの補助上限額」×連携する小規模事業者数の金額となります。
※ただし、上限は500万円と定められています。
次に、どのような事業について補助金を受け取ることができるのか、対象となる事業について見てみましょう。
3.小規模事業者持続化補助金の対象となる事業は?
小規模事業者持続化補助金の対象となる事業は、冒頭でもお伝えしたように、商工会・商工会議所と連携して行う「地道な販路開拓」や、これに伴う「生産性向上のための取り組み」です。
では、「地道な販路開拓」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
公募要領には次のような例が挙げられています。
地道な販路開拓の例
- 新商品を陳列するための棚の購入
- 新たな販促用チラシの作成、送付
- 新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)
- 新たな販促品の調達、配布
- ネット販売システムの構築
- 国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加
- 新商品の開発 ・新商品の開発にあたって必要な図書の購入
- 新たな販促用チラシのポスティング
- 国内外での商品PRイベントの実施
- ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言
- (買物弱者対策事業において)移動販売車両の導入による移動販売、出張販売
- 新商品開発に伴う成分分析の依頼
- 店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む。)
※「不動産の購入・取得」に該当するものは不可
あくまでも例ですので、ここに挙がっているものだけが対象となるわけではありません。
販路の開拓は、国内市場だけでなく、海外市場の販路開拓も対象となります。
また、消費者向け、企業向け取引のどちらも対象です。
上記の地道な販路開拓とあわせて行う事業効率化、言い換えれば「生産性向上のための取り組み」を実施する場合はこちらも補助対象事業となります。
業務効率化(生産性向上)の取り組みについては、「サービス提供等プロセスの改善」と、「IT利活用」があり、公募要領では次のような例示がされています。
業務効率化(生産性向上)の取り組みの例
「サービス提供等プロセスの改善」の取組事例イメージ
- 業務改善の専門家からの指導、助言による長時間労働の削減
- 従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装
「IT利活用」の取組事例イメージ
- 新たに倉庫管理システムのソフトウェアを購入し、配送業務を効率化する
- 新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する
- 新たに POS レジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する
- 新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する
以上が例として示されています。
「業務効率化(生産性向上)の取り組み」は、副次的な支援ですので、特に当てはまる取り組みをしない場合には、記載しなくても大丈夫です。
なお、「地道な販路開拓」なしで、「業務効率化(生産性向上)の取り組み」のみでの申請は、この補助金制度の趣旨に反するということで認められませんので、注意しましょう。
以上が、この補助金制度で対象とされている事業です。
上記の取り組みを行うためにかかった経費について、補助を受けることができます。
では、次に補助の対象となる経費の注意点について少し見てみましょう。
4.小規模事業者持続化補助金の対象経費について
小規模事業者持続化補助金の対象経費は、上記の販路開拓や業務効率化(生産性向上)の取り組みを行うためにかかる次の14項目の経費が補助の対象です。
- ①機械装置等費
- ②広報費
- ③展示会等出展費
- ④旅費
- ⑤開発費
- ⑥資料購入費
- ⑦雑役務費
- ⑧借料
- ⑨専門家謝金
- ⑩専門家旅費
- ⑪車両購入費(買物弱者対策事業の場合に限ります)
- ⑫設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)
- ⑬委託費
- ⑭外注費
また、公募要領では上記経費のうち、補助金の対象として認められるものは、次の3つの要件をみたすものとされています。
- ①使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- ②交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費
- ③証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
補助金の採択が決定されると、補助金事務局から採択者に対して「採択通知書」が送付されます。
その後、補助金の交付(支払い)対象としての事業の実施を正式に認める「補助金交付決定通知書」が送付されます。
補助金の対象となる経費の発注・契約・支払は、「補助金交付決定通知書」受領後から可能となります。
たとえ、補助事業期間中に発注や引き渡し、支払等があっても、実際の事業の取り組みが補助対象期間外であれば、当該経費は補助対象にはなりませんので気をつけて下さい。
補助金を受け取るには、『補助事業実施期間中に実際に使用し、補助事業計画に記載した取り組みをした』という実績報告が必要となります。
また、補助対象経費の支払方法は銀行振込が大原則です。
事業が正しく実施されているか確認するために、旅費や現金決済のみの取引(代金引換限定のサービス等)を除いては、1取引10万円超(税抜き)の支払では、現金支払いは認められません。
自社振出・他社振出にかかわらず、小切手・手形による支払いや、相殺(売掛金と買掛金の相殺等)による決済は認められませんので、注意しましょう。
5.小規模事業者持続化補助金の申請手順は?
小規模事業者持続化補助金の申請手順をご紹介します。
申請から補助金の交付までは、基本的には次のような流れになります。
- ①経営計画書・補助事業計画書の作成
- ②地域の商工会・商工会議所で、補助事業者の要件を満たしているかなどの確認を受けるとともに、事業支援計画書等の作成・交付を依頼
- ③送付締切日までに商工会・商工会議所の補助金事務局まで申請書類一式を送付
- ④商工会・商工会議所で審査が行われ、採択・不採択が決定
- <以下、採択の場合>
- ⑤交付決定後、販路開拓の取り組み実施
- ⑥所定の期日までに実績報告書等の提出
- ⑦商工会・商工会議所にて報告書等の確認
- ⑧報告書の不備・不足がないことが確認された後、補助金の請求・受領
以上が、小規模事業者持続化補助金の基本的な申請手順です。
事業を行っている場所の管轄が商工会なのか、商工会議所なのかによって提出先や提出期日が変わりますので、事前にしっかり確認を行うようにしましょう。
また、商工会・商工会議所に作成を依頼する事業支援計画等の書類については、十分余裕を持って依頼するように気をつけたいところです。
では最後に、申請の際に必要な書類について見ていきます。
小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類は?
小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類は、次の通りです。
平成29年度補正予算の公募要領を参考にしています。
- 様式1:小規模事業者持続化補助金に係る申請書
- 様式2:経営計画書
- 様式3:補助事業計画書
- 様式4:事業支援計画書(地域の商工会・商工会議所が発行)
- 様式5:交付申請書
- 代表者の生年月日が確認できる公的書類の写し(運転免許証や健康保険証など)
※代表者の年齢(平成29年12月31日現在)が満60歳以上の応募者は、商工会・商工会議所が作成・発行する「様式6:事業承継診断票」が必要です。
上記に加えて、申請者が法人か個人事業主かによって次の書類が必要となります。
法人の場合
- 貸借対照表および損益計算書(直近1期分)
- 現在事項部証明書または履歴事項全部証明書(申請書の提出日から3ヶ月以内の日付のもの)
個人事業主の場合
- 直近の確定申告書
【第一表、第二表、収支内訳書(1・2面)または所得税青色申告決算書(1~4面)】(税務署受付印のあるもの)または開業届(税務署受付印のあるもの)
以上が申請に必要な書類ですが、この他にも取り組む事業の内容や、加点項目がある場合等にはそれぞれに必要な書類を添付して提出します。
申請書類とあわせて、必要事項を記入した様式1,2,3,5と事業承継計画書(*「事業承継計画加点」の付与希望者のみ)を保存した電子媒体(CD-R、USBメモリ等)も用意します。
申請書類一式がそろったら、期日までに商工会・商工会議所の補助金事務局まで郵送で送付します。
まとめ
今回は、小規模事業者持続化補助金の概要や申請手順、申請に必要な書類などをご紹介しました。
必要な書類がそろっていないと、審査してもらえませんので、送付前にしっかり確認するようにしましょう。
提出期日を過ぎてしまうと、当たり前ですが受け付けてもらえませんので、作成に時間がかかる書類などは、余裕をもって取り掛かりたいですね。
今回の記事作成にあたっては、平成29年度補正予算の公募要領を参考にしました。
次回の公募時には変更があるかもしれませんので、その都度しっかり確認してくださいね。